芸術科演劇専攻46期卒業公演ab組 『ひめゆりの塔』
原作:菊田一夫 演出:越光照文 『ひめゆりの塔』
2月22日(金)~24日(日)に俳優座劇場にて、『ひめゆりの塔』を上演しました。
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イベントレポート
芸術科ストレートプレイコース・声優コース 卒業公演「ひめゆりの塔」菊田一夫 作という、戦争の不条理、悲惨と本格的に取り組んだ作品を、越光照文学長の熱血な指導の下、上演しました。
上演時間4時間20分。いまも解決することのない「沖縄の問題」のうち、最も重要な局面であるあの第二次世界大戦での惨禍、日本国内で唯一の地上戦の場となった惨禍を、リアリティ豊かに描いた上演は、その長さを感じさせることのない完成度でした。息つく暇もないような緊張感の連続は、役者たちののどがちぎれんばかりの発声、魂のすべてをしぼりつくすような感情移入、立体的な舞台美術・照明・音響の豊かな造形とのコラボレーションの結果、構成されたものです。音楽専攻の学生が生演奏でさらに上演を重厚にしてくれます。音楽家の体験としても、この生の上演の舞台に乗って、舞台の進行に動揺しながらしかし役者の演技にこたえるように奏でることを要求される数日間は稀有なものになったでしょう。これも桐朋学園芸術短期大学ならではのアンサンブルです。
上演時間4時間20分。いまも解決することのない「沖縄の問題」のうち、最も重要な局面であるあの第二次世界大戦での惨禍、日本国内で唯一の地上戦の場となった惨禍を、リアリティ豊かに描いた上演は、その長さを感じさせることのない完成度でした。息つく暇もないような緊張感の連続は、役者たちののどがちぎれんばかりの発声、魂のすべてをしぼりつくすような感情移入、立体的な舞台美術・照明・音響の豊かな造形とのコラボレーションの結果、構成されたものです。音楽専攻の学生が生演奏でさらに上演を重厚にしてくれます。音楽家の体験としても、この生の上演の舞台に乗って、舞台の進行に動揺しながらしかし役者の演技にこたえるように奏でることを要求される数日間は稀有なものになったでしょう。これも桐朋学園芸術短期大学ならではのアンサンブルです。
もう68年前になるあの戦争の時代、身体の危険が限度を越えた恐怖の中で、ひめゆりの教師と生徒たちの信頼関係が、いっそう確かなものに感じられるのが不思議といえば不思議です。人の命ははかない。けれどだからこそいっそう人の命は尊い。その命が一つ一つぞんざいに、乱暴に扱われた戦争という事件のことを客席とともに深く考え、感じる時間は、熱くてやさしい感情に終始伴走されることになります。演技に集中することが、そのまま人間の存在を考え、社会の問題に直面するということになるプロセス。演劇創造を通して人間教育を追究する本学のスタイルの真骨頂がここに発揮されたといってよいでしょう。
この作品は1953年に書かれたものです。若者たちにとってはずいぶん古いものかもしれません。けれど上演はちっとも古びていません。日本社会を取り巻く問題が、この戦争を古い記憶のかなたに追いやって済むことにはしなくなってきているからです。国会内での保守的な勢力の伸張、タカ派ともいっていい一部の政治家の突出した行動を発端として、今周辺諸国と日本は険悪な関係にひきずりこまれようとしています。沖縄に大半の米軍基地を押し付けたままの「平和」が正当なものでないということは、オスプレイの強行配置、それに対する沖縄全自治体首長が反対する意思表明、県民の大きな反対運動によって明らかにされつつあります。
そうした問題をただ本で読んで勉強したり、話を聞いて勉強するのではなく、彼ら役者は衣装を着付けて勉強し、軍歌を大音声で歌う体験をして勉強し、実に身をもって自分のものにしたのです。その思いの強さが、スタッフワーク、演技、すべての要素から客席に伝わる上演でした。
この稽古に臨むために沖縄現地を訪れた学生たちも多くいました。この上演で多くの学生はこの学び舎を卒業して去っていきますが、この経験が最後ではなく、これからの役者生活の最初の体験として胸に刻まれることは間違いありません。彼らが次の時代の演劇状況を強く支え、そして表現が魂を揺さぶるための有力な一翼を形成していくことを確信する上演でした。
この稽古に臨むために沖縄現地を訪れた学生たちも多くいました。この上演で多くの学生はこの学び舎を卒業して去っていきますが、この経験が最後ではなく、これからの役者生活の最初の体験として胸に刻まれることは間違いありません。彼らが次の時代の演劇状況を強く支え、そして表現が魂を揺さぶるための有力な一翼を形成していくことを確信する上演でした。
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井上理恵先生blog
本作に関する批評
本学非常勤講師:井上理恵先生のblog「井上理恵の演劇時評」に、本作品に関する批評が掲載されています。本公演ならではの魅力や作品に関する解説等を丁寧に書いてくださっているので、ぜひご覧ください。
井上先生blog 『井上理恵の演劇時評』
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