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イベントレポート

調布市せんがわ劇場地域連携事業 2014年度二専攻合同公演 専攻科演劇専攻修了公演


『天保十二年のシェイクスピア』 作 井上ひさし 演出 宮崎真子
1月29日(木)~2月1日(日) に調布市せんがわ劇場地域連携事業、二専攻合同公演、専攻科演劇専攻修了公演『天保十二年のシェイクスピア』を上演しました。


イベントレポート

『天保十二年のシェイクスピア』は、井上ひさしによる、宝井琴凌作『天保水滸伝』などの侠客談義とシェイクスピア全37作品を基に描かれた壮大な任侠劇です。1974年初演(出口典雄演出)、2002年(いのうえひでのり演出)、2005年(蜷川幸雄演出)などで上演され、今回は井上自らが改訂した2005年版に基づき、約2割を演出にあたった本学教授の宮崎真子がカットし、全17ナンバーの歌曲とBGMを、音楽監督の後藤浩明の指導のもと、音楽専攻の学生たちが作曲を分担、本番の生演奏も音楽専攻による音楽劇として、3時間半の大作に結実させました。演出の宮崎がこだわった木枠6枚のみを駆使したスピーディーな場面展開と、学生たちの明晰なセリフ、鍛えぬいた演技、バラエティ豊かな音楽、スズキ拓朗によるポップな振付、藤田けんによる息をのむような殺陣などがあいまって、上演時間の長さを全く感じさせない、井上戯曲の魅力を最大限に引き出した舞台成果を上げ、エンディングの音楽に客席からの手拍子が止まらず、大傑作が誕生しました。

劇場に入ると、舞台前面に浮かび上がるのは、6枚の木枠に新聞紙が張られ、墨で書かれた『天保十二年のシェイクスピア』のタイトル。エネルギーあふれる音楽とともに、20人を超す百姓隊が新聞紙を突き破って「もしもシェイクスピアがいなかったら」オープニングナンバーの始まりです。
全編を通じて語り部となる百姓隊長の語りに導かれ、下総の国の清滝村を舞台に、リア王を基にした鰤の十兵衛が3人の娘に身上分けをもちかけるところから物語は始まります。嘘のつけない末娘のお光は、父の怒りをかって家を出て行き、長女のお文、次女のお里のふたりに十兵衛の財産が分け与えられますが、ふたりのいがみ合いは、ロミオとジュリエットをベースにした紋太一家と花平一家の抗争につながります。
お文、お里ともに夫を殺し、相手方が下手人だと申し立て、両家は一触即発の雲行き。
そこに現れるのがリチャード3世を担う、佐渡の三世次。父親は清滝村の抱え百姓でしたが、年貢が払えず、人別帳からも外され、せむしで顔に醜い火傷を負った三世次は、言葉をたくみに操り、人を欺き、金と女と出世をたくらみ、お里の花平一家の新しい親分幕兵衛に取り入ります。
一方お里の紋太一家を牛耳る九郎治のもとへ、殺された父親の復讐を遂げるため帰ってきたハムレットを担う王次。三世次の策略により、父の亡霊から下手人は九郎治で、母のお里も共謀したことを知り、狂気に陥り、婚約者のお冬に女郎か尼かを迫り、お冬の父、ぼろ安を殺害してしまいます。しかし花平家への討ち入りの真っ最中、帰ってきたお光と恋に落ち、そして清滝村に新しい代官土井茂平太が赴任するため、両家の争いは一旦収まるところで1幕が終わります。1幕では、他にも桶屋の佐吉と吉原の花魁浮舟との恋や佐吉の母おこま婆、謎の清滝の老婆や関八州の老婆たちの予言、お光の双子の姉妹おさちが新代官土井茂平太の妻であることなど、多様な伏線が張られていきます。

2幕になると、土井茂平太をもてなす両家の花見の場となり、お光とおさちの早替りが引き起こす、双子ゆえの勘違いから、九郎治、お文、王次があの世にゆき、紋太一家は滅んでしまいます。その好機をすかさず三世次は自分の出世に利用、花平家の幕兵衛、お里を心中に追い込み、清滝村を手中に収めますが、お光かおさちを我が手にいれたい一心。ここで清滝の老婆は「自分で自分を殺さない限り、誰にもお前を滅ぼすことはできない」と告げます。力づくでお光を襲おうとして、逆らうお光を殺害し、その罪で土井茂平太から折檻されても、言葉と金の力で土井茂平太をも殺害、ついに清滝村の代官に成り上がります。しかし代官となった三世次は自分の出自である抱え百姓にまで重い年貢を科し、逆らう者を殺し、夫と妹を殺されたおさちの復讐を受け、鏡に映った醜悪な自分の姿を殺し、抱え百姓たちの反乱の中で、竹槍で串刺しにされ死んでいく・・・。

シェイクスピアの全37作品を登場させた井上ひさしの卓越した構成力、ことば遊び、天保水滸伝を基にした任侠と女郎の猥雑な美学は圧倒的な迫力をもって迫ってきます。そして、この壮大な作品を、せんがわ劇場という小さな空間の中で矢継ぎ早に息をのむスピード感と空間構成、演技、歌、ダンス、殺陣でまとめきった宮崎真子教授の演出の手腕と、スタッフの皆様のプロフェッショナルな作品作り、そして演出の要求を上回る迫真の演技で演じきった専攻科生、助演者、芸術科1年生たちに、心から拍手を送りたいと思います。専攻科2年生にとっては桐朋での4年間の学業の集大成となる本公演は、一生の思い出、財産となることでしょう。

井上理恵先生blog

本作に関する批評

本学特任教授:井上理恵先生のblog「井上理恵の演劇時評」に、本作品に関する批評が掲載されています。本公演ならではの魅力や作品に関する解説等を丁寧に書いてくださっているので、ぜひご覧ください。

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