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2012年度 第3号 鈴江俊郎


2012年8月10日 金曜日
演劇専攻/鈴江俊郎准教授(演劇専攻主任)

役者の美

桐朋学園芸術短期大学 専攻科演劇専攻 試演会『家を出た』を6月30日、7月1日に上演しました。その作・演出を担当した鈴江俊郎です。本学では演劇専攻の主任もつとめています。今回のお芝居のあらすじは、ちょっと不思議な設定です。
死んだはずの吉田が目を覚ますとそこは、ある「場所」だった。死者たちはいったんそこに立ち寄り、そしてぷつっと、すべて消えてしまおう、と決める。一日のうち決まった時間だけ下界、現世のことを覗くことができるけれど、そんなことをしてどうなるというのだろう。さまざまな若者たちがそこでもがく。友達想いのバスケット部員たち、いじめに復讐した少女、永遠の恋を誓った少年。いのちっていうのは、いとおしく、そしてこっけいに輝いている。そんな様子をささやかに描くこのストーリー、つまりおおげさな歌やダンスもなく、ただただ繊細で微妙な調子の変化を役者は求められる、「台詞劇」といってよいものです。しかも写実、というよりは自然、というような立ち姿を要求される、高度に難しい演技です。専攻科というのは短期大学を卒業した後の学生が「さらにチャレンジして学ぶのだ」という課程で、一般の大学で言うと3年生、4年生にあたる学年だからこそ、私はこの課題をこの座組みに要求したのでした。

役者たちは応えてくれました。むずかしいことを、高度な技術があるふうに演じてはいけない。いかにも簡単にやってのけられるように演じないと自己満足の演じ方に終わってしまう。役者が苦労したあとなど客に示すのはおしゃれじゃないのさ……きつい課題だったと思います。学生たちは半べそをかきながら、連日の稽古をしのいでくれました。そして、本番は見事に笑顔でした。さわやかなあせ、さわやかな達成感、やはり登る途中の道が険しければ険しいほど、登りきった頂上の風景は美しく見えるのです。
彼ら自体が美しく変貌していました。ああ。学生たちが一つ一つこうやって芝居をのり越えていくたびに美しく変化していくのを目撃できるのは教師として至上のよろこびです。
どうか皆さん、秋も試演会はたくさんあります。小劇場に見に来てくださいね。

専攻科演劇専攻試演会『家を出た』イベントレポート

芝居の様子がわかる写真を多数掲載しています。
舞台美術の美しさをとくとご覧ください!

作・演出:鈴江俊郎/専攻科演劇専攻 試演会『家を出た』
イベントレポートはこちらから
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