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大学案内

2012年度 第5号 福田恵子


2012年10月12日 金曜日
音楽専攻/福田 恵子教授

海外研修旅行を終えて

クララの家へ、ブラームスも渡ったであろう橋の上で

2012年度 音楽専攻の海外研修旅行が無事終了した。帰国して間もない私の体内には、まだ重厚なドイツの空気が残っているような気がする。今年の海外研修に私は、団長の音楽専攻主任松井教授の補佐として引率に加わったが、16日間の長い旅のなんと楽しかったことか。
旅の行程を簡単に書くと、始めの一週間はドイツ、フライブルクにて学生達がそれぞれ専攻する楽器、声楽等に分かれ、レッスンを受講。レッスン最終日には先生方とのお別れパーティがあり、各テーブルではドイツ語、フランス語、英語が聞こえ、「ここはヨーロッパだ!」といやでも感じさせられた。

ライプツィヒ、トーマス教会バッハ像の前で

翌日より貸切バスにて、ストラスブール(フランス)、バーデン・バーデン(以下ドイツ)、ハイデルベルク、アイゼナッハ、ヴァイマール、ライプチヒ、ドレスデン等を、残りの10日間をかけて廻った。かの地は偉大なる作曲家バッハ、メンデルスゾーン、リスト、シューマン、ブラームス、ワーグナー等の所縁の地で、あたかも「音楽版聖地巡礼」という観であった。私は人生をだいぶ長くやっているので、ヨーロッパに足を踏み入れるのも回を重ねたが、今回初めての地も多く、音楽史の息遣いを肌身で感じられる素晴らしい機会になった。
専門は作曲なので、前述の偉大なる作曲家たちがある時は締め切りに追われ、ある時は筆が進まず、またある時は書いた譜を捨てねばならなかったり、そうしたあげくに書き上げた時の喜びなどなどが、展示されている机やオルガン、ピアノに染みついているように感じられた。
バーデン・バーデンでは美男のブラームス(髭のない若い頃の彼は目を見張るような美男!)が、夏の間滞在した家から、ロベルト亡き後のクララ・シューマンの家に通った道筋を皆で歩いた。今もせせらぎに沿ってあるその小路は緑深く美しかった。
参加した学生ひとりひとりが何を感じ、何に興味を持ったかは様々であろうが、これからの勉強、人生の中で、この研修旅行で得たものの何かがふと思い起され輝きだすことをおおいに期待したい。石畳の感触、緑の木漏れ日、ドイツ料理、壮麗なトーマス教会、ゼンパー歌劇場で見たオペラ、バッハのオルガン、思い出すものは何でもよい。

鍵を待っている間のヴァンサン・リュカ先生特別コンサート。
拍手喝采!

順序が前後するが、始めの一週間のレッスン時にも目を見張ることがあった。学生達は先輩、同級生、後輩達が見ている前で個人レッスンを受けるわけで、特に今回初めて受講する学生の緊張は相当なものだったと思うが、教授たちの指導、指示にたいへん素直に心を開いて、体当たりでそれに従おうとしていた。その姿は見ている私を感動させるものだった。 こんなこともあった。最終日が土曜日にあたり、朝学校に行ってみると学校側の手違いでレッスン棟のカギがかけられてしまって開かない。しかたがなくカギが到着するまでの一時間あまり、開いていたホールで待つことになったが、フルートのVincent Lucas先生(パリ管 主席奏者)が飛び入りのコンサートを催してくださった(ピアノは本学の東井美佳先生)。突然のコンサートにもかかわらずフルートの音は艶やかで、いとも簡単に見えるほどの自在な演奏だった。

こうした旅の濃密な付き合いのなかで、19歳から50歳代の学生まで、学年、年齢の垣根を越えお互いをファーストネームで呼び合っている様は、年長者の私には初め違和感を感じないわけにいかなかったが、慣れるにしたがいこれこそが我が校独特の面白さであり、長所なのであると思えた。バスの中ではいつも冗談が飛び交い笑い声があがる大変な賑やかさだったが、「少し静かにしなさい」とは松井先生も私も言わなかった。 
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