演劇専攻卒業生インタビュー 48期 茶谷健太さん
自分自身と向き合いながら、後悔なく歩んでいくこと
2015年に芸術科演劇専攻を卒業し、現在は得意なアクションやアクロバットなどを活かしてミュージカルからストレートまで幅広く活躍する茶谷健太さんにインタビューしました。
茶谷健太(Kenta CHATANI) フレンドシッププロモーション所属。桐朋学園芸術短期大学演劇専攻48期卒業生。 主な出演作品に「ナイツ・テイル―騎士物語―」「ピピン」「ビリー・エリオット」「ウエスト・サイド・ストーリーSeason2」「ウェイトレス」等。 |
演技発表会『見よ、飛行機の高く飛べるを』より
実技公開試験「クラシック唱法」
2年間ですぐに表の舞台に立ちたかったというのもあったので、桐朋いいじゃん、と。
――演劇を始めたのはいつからですか?
――小学生の時から毎日踊っていたんですね。
――授業後は何をしていたの?
――学校終わっても演劇をしていたんですね。
――初めて桐朋に行ったのはいつになりますか?
試験は指定校推薦で、面接しか受けてないので皆さんほど苦労せず……。ただ、宮崎先生から「埼玉県から本当に通えんの?」って言われた記憶はすごくあります。
食べていけないってことをちゃんと言ってくれるじゃないですか。「演劇で食べていけると思うなよ」って。
――在学中の思い出は?
――やってたよね!ちゃたミュ!!ちゃたミュの存在はみんな覚えてると思う。実は、今もパンフレットに載ってるよ!
ちゃたミュは松本征樹との思い出がありすぎて、大学のというより松本征樹との思い出になっちゃうんで、(事前アンケートには)書いてなかったんですけど。松本君は一番仲良かったんです。
桐朋祭2014:(松)ちゃたミュ『HOPE』より
桐朋祭2014:(松)ちゃたミュ『HOPE』より
――じゃあ、松本君との思い出も聞いておこうかな(笑)
――高校時代にはいないライバルが出来たんですね。
一緒にダンスグループとかもやってましたからね。おらほ祭り(※)で、ステージで何か披露してくれない?って言われて、俺らしかやる人いなくて、やるか!って。懐かしいですね(笑)
(※)おらほ祭り:仙川商店街主催の夏祭り。桐朋生もステージ出演や運営のお手伝いなどで協力しています。
――試演会・卒業公演はどうでしたか?
――それは、指導を受けてというよりは、役について考えて泣けてしまう感じ?
演劇専攻48期試演会『SPRING AWAKENING』より
演劇専攻48期試演会『SPRING AWAKENING』より
演劇専攻48期試演会『SPRING AWAKENING』より
演劇専攻48期試演会『SPRING AWAKENING』より
演劇専攻48期卒業公演『三文オペラ』より
演劇専攻48期卒業公演『三文オペラ』より
ちゃんとしっかり2年後を見据えて頑張ることができる人って、絶対に卒業しても頑張っていけるんですよ。
――桐朋学園のいいところについて、アンケートには「生きていくむずかしさをきちんと教えてくれるところ」と書いてありますが、どうだろう、でもまあ確かに「桐朋に来れば絶対にプロになれてスターになれるよ」とは言わないよね。
あとは、桐朋を超えるしんどさはないんですよ、プロに入って。体力的な部分でも。僕が去年スウィングやらせてもらって、十何役を一回で覚えなくちゃいけなかったんですが、舞台上には立たせてもらえなくて、端でノート書いて、みたいな日々。でも、桐朋の経験があるからそんなにしんどくなってないんですよ。みんなから「ほんと大変だよ?」って言われたりしてたんですよ。もちろん急にそこ代わってって言われた時の焦り具合は半端ないですけど、ちょっと誰か怪我しちゃったから代わりに入ってくれる?みたいなのとか。でもやっぱり、桐朋の大変さに比べたら、大変じゃないんですよ。てことはしんどいんですよ、桐朋の2年間は。
――スウィングを超えるしんどさはあるかなぁ……
――確かに自然と当たり前のようにみんなやっていたけれど、これを言語化してくれた人は初めてで新鮮です。
実技公開試験「ショーダンス」
この曲では振付も担当
「ヘアメイク実習」でのひとこま
僕の中では運命を感じたというか、必然的に出る運命だったんだなって
――続いて卒業後についてですが、このすごい作品たちをどう聞けばいいんでしょう……
まず、2.5次元ミュージカルから入ったんですよ、実は。新ジャンルから入っていて。なんかこう、求められているものが違ったんですよ、全然。まずは、かっこいいこと。僕はメインじゃなかったのでやってないですが、アニメのキャラクターから逸脱しすぎないこと。ちゃんと演じる人の個性もありつつ、アニメのキャラに見えるか。あとは、女の子の人気があるかどうかとか。でも、2.5次元界にも素晴らしい演出家の方がいらっしゃって。僕が受けた演出家の方は、小劇場出身で、吉本新喜劇とかもやっていて、やっぱりそこで桐朋で学んだことを言われる機会があったんですよ。それに僕が入った作品って、ソールドアウトの作品が多くて。即日完売。人気の理由がちゃんとありますし、舐めてかかっちゃいけないなと思いましたね。
僕がとうとうここまで来たんだなって思った作品は『ナイツ・テイル』ですね。帝国劇場に初めて出させてもらった作品です。2018年ですね。井上芳雄さんと堂本光一さんが主演で、演出家がレミゼラブルを創ったロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのジョン・ケアード。社長から受かったっていう連絡が来た時、電車の中にいてびっくりして電話落としちゃったんですよ、信じられなくて。島田歌穂さんとかレジェンド級の方々も出演している作品ですよ、あと上白石萌音ちゃんとか。また、『ナイツ・テイル』はシェイクスピア作品だったのでやっぱり難しいんですよね。話は単純なんですけど、セリフが難解じゃないですか。ただジョンがメインの方々に「別にシェイクスピアは難しい言葉を淡々と述べてほしいと思っているわけじゃないから、カッコつけてしゃべってると思って話せばいい。」って仰っていたんですよ。難しいセリフたちを難しいと捉えるんじゃなくて、こういう言葉づかいかっこよくない?って思ってしゃべるだけでいいと。それが、そんな簡単な言葉が、自然と皆さんの芝居力を高めていて。そんな簡単なことでいいのって思っちゃったんですけど、それがすごい印象に残っています。演出家のジョン・ケアードは、もう70代なのかな、それでも常に裸足で立ち続けてずっと舞台上でみんなの指導をし続けるその姿がかっこいいんですよ。レミゼラブルが30年40年前の作品ですから、それを創り上げた方の想いって熱いものがありますよね。だから、今でも忘れません、帝国劇場の初日の景色って。やっぱりソールドアウトだったんで、満席で、歴史も深い場所で、自分が目標にしてたところに来れたんだなって思って。すごい幸せな時間を過ごさせてもらいましたね。それがまた今年再演できるので、再び帝国劇場に立てるのが楽しみですね。
あとは、『ピピン』と『ウェイトレス』はダイアン・パウルスさんという方が演出の作品。この方の作品は僕の中で一番桐朋とリンクしましたね。最初のシーンM1「Magic To Do」のモチーフというか、着想を得ているのが三文オペラなんですよ。僕がやったピーチャムが語りかけている第4の壁を壊すあれをモチーフにして曲が作られていると。そこで繋がるんだって思いましたね。僕の中では運命を感じたというか、必然的に出る運命だったんだなって。桐朋って群衆のお芝居が飛びぬけてパワフルですよね。そのアンサンブル力はダイアン・パウルスもすごく大切にしていて、演出で使うんですよ。いろんな作品出てる中で、アンサンブルに対する指示がないこともあるのですが、『ピピン』はしっかりとアンサンブルまで創られている。それは、ウェイトレスでもそうで。ウェイトレスはパイを作るのが得意な女の子が空想の中でパイを作るシーンで、アンサンブルがその材料を持ってきたりするんですけど、アンサンブルは大忙しです(笑)本当にこれからダイアン・パウルスの作品が日本に来ることがあればぜひ観ていただきたいです。ファインディング・ネバーランドとかもそうですよね。
『ビリー・エリオット』はスウィングで参加したのですが、稽古時間中ほとんど舞台上で稽古させてもらえないんですよね。スウィングの稽古時間は、稽古が終わった後。再演だったので、振りを覚えている人には振り下ろしをしなくなっちゃうんですよ。だから、やっている動きを見るか、本人に聞かなくちゃいけない。あと何が大変って、芝居の動線がすべて決まってるんですよね、アンサンブルの動きも。ここでコップをとってここまで持ってきてここでおろす、とか。ここを水を洗い流して~ってことが全部決まっていて、てんやわんやでしたね。作品は本当に素晴らしいです!桐朋の先生方も納得してくださるんじゃないでしょうか!
日本人演出家だと、白井晃さんですね。白井さんは全責任を負ってくれるんですよ。簡単なことじゃないですよね、キャストやスタッフに投げやりにしないって。それこそ、僕がアクロバットの稽古で膝から落ちて怪我をして救急車で運ばれた時、真夜中だったんですけど白井さんが病院にかけつけてくれて。「怪我が治ったらまた絶対一緒にやりたいから、絶対復帰して来いよ、絶対俺と一緒にやろうな」って。泣きましたね、本当に。本当に熱い方で。白井さんという演出家がこれだけ多くのミュージカル、ストレートプレイを任されているのは人柄だなって思いました。こういう方が引っ張っていく芝居って本当に面白いし、素敵ですよね。
まだまだ話したいことあるんですけど、『ウエスト・サイド・ストーリー』とかね。長くなっちゃうからこれくらいにして……(笑)
コロナ禍で公演ができたことって、あらゆる人たちの努力の結果の奇跡だなって思っています。本当に今、舞台界は一丸となって頑張っている
――コロナ禍での活動を教えてください
でもやっぱり、コロナ対策のもとでやる稽古は大変だなって思いましたね。この間のウェイトレスなんかは週1でPCR検査を受けさせてもらってて。恥ずかしい話、僕稽古頭で胃腸炎になっちゃって、コロナかと思うじゃないですか、そしたらすぐバイク便で自宅まで検査キットを持ってきてくれましたね。ご飯食べるときは壁に向かって衝立がある部屋を用意してくれますし、楽屋も一席ずつシールドがあるし、ある程度安心して稽古に臨める環境で、どの現場も万全の態勢が敷かれていますね。スタッフさんは大変で、演出部さんたちが休憩になるたびに床とか全部消毒して掃除して、小道具も使ったら全部拭いて。コロナ禍で公演ができたことって、あらゆる人たちの努力の結果の奇跡だなって思っています。本当に今、舞台界は一丸となって頑張っている、本当にすごいことですよね。作品によっては地方公演とかもホテルと劇場の行き来以外外出禁止で、コンビニに出るのも許可制。徹底してますね。もちろん飲み会とかも一切行ってないですし。交流ができないのは残念ですけどね。
――卒業して苦労したことは?
――そういう時の消化方法があったりしますか?
――中高生へのメッセージをお願いします。
茶谷健太さん出演情報
2018年に初演。待望の再演が決定!
2021年9月:梅田芸術劇場(大阪)
2021年10・11月:帝国劇場(東京)
2021年11月:博多座(博多)
ブロードウェイミュージカル『ピピン』
2022年8月~9月:東急シアターオーブ (東京)
2022年9月: オリックス劇場(大阪)