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活躍する先輩たち

演劇専攻卒業生インタビュー 49期 森田万貴さん



努力を日常化させる、続けることも才能。続けることをやめなければ、いつかチャンスは廻ってくるんだなって、やっと思えるようになりました。

2016年に芸術科演劇専攻を卒業し、2021年11月には帝国劇場『マイ・フェア・レディ』に出演予定の森田万貴さんにインタビューしました。
森田万貴(Maki MORITA)
桐朋学園芸術短期大学演劇専攻49期卒業生。
ミュージカルアカデミー05期生。卒業後、ドラスティックダンス"O"カンパニーメンバーとなる。主な出演作『SHIRANAMI』(フジテレビ)『ふたり阿国』(明治座)など。近年は前田清実氏の振付アシスタントとして、『アリージャンス』『DREAM BOYS』などの作品に携わる。

演2実技公開試験

演1後期演技発表会『楽屋』より


――演劇を志すきっかけを教えてください

森田さん :4才からバレエをやってて、ずっと夢が舞台とかバレリーナとか、芸事に関することでした。中学の時にライオンキングを観て、ミュージカルやりたいって思って高校は茶谷先輩と一緒なんですけど、埼玉県立芸術総合高等学校に行って。そこで確実に夢がミュージカル女優になっていきましたね。でもミュージカルやるにはお芝居も分かってないとと思って、でも22歳まで大学行くのも……と思ったので短大に決めました。

――演劇部?

森田さん :帰宅部でした!!ただただ踊って、帰ったらバレエやってました。高校までバレエ一本。ジャズダンスとかをちゃんと習い始めたのは短大入ってからですね。

――桐朋を知ったきっかけは?

森田さん :高校の進路イベントで知りました。高校の卒業生も結構たくさんの人が行ってるし。なので、母とも相談して、やっぱり2年がいいんじゃないかと。

――入試は指定校?

森田さん :踊ったし、面接もしたので、推薦入試ですかね…。バレエを踊って、個別面談では信太先生が担当だったんですが、娘さんはバレリーナなので、チーンってなった覚えがあります。ボロボロだったんですよね、実技。全然できなかった。

先輩方は恥なんか捨てまくってるんですよ。かっこよかった。それを目の前で見てて、舞台をより好きになりました。


――桐朋に入ってみて最初の印象はいかがでした?

森田さん :なんだろう、とにかく強かった。上下関係厳しい。プラス、今の日本にちょっとそぐわない社会してんなと(笑)。理不尽なこと多い。全体として。あと入って急に高尾山とか。めちゃくちゃ運動部。軍隊みたいな感じ。授業始まる前に食らいましたね。
授業ではゲスナー先生の『赤色エレジー』からスタートして、どんどん自分の皮をはがされていく。恥なんかあったらできないんだなと思いましたね。最初はミュージカルもやらせてもらえないじゃないですか。だから自分の好きなこと出来ずお芝居ばっかりで、苦手なことにぶつかりまくって不安でした。

自分の中での1年生の時の1番の思い出は、専攻科さんの『天保十二年のシェイクスピア』(46期専攻科修了公演@せんがわ劇場 公演情報イベントレポート)。そこに出させてもらって、なんて芝居って魅力的なんだって思いましたね。とにかく作品を大好きになり、先輩方の芝居を近くで観て、ハンパなく刺激を受けました。あれめっちゃ面白かったですよね!大好き!1年生の割には真ん中で踊らせてもらったりとかもして、チャンスもちょこちょこ与えていただき。先輩たちに交じってやることでエネルギーとかも受け取るじゃないですか。楽しかったですね。先輩方は恥なんか捨てまくってるんですよ。それを目の前で見てて、かっこよすぎましたね。オールマイティーなんですよ、歌もダンスもやりまくってて、エンターテイメントで、舞台をより好きになりました。

演1前期演技発表会『赤色エレジー』より

演1後期演技発表会『ショートシーン集』より

46期専攻科修了公演『天保十二年のシェイクスピア』より

46期専攻科修了公演『天保十二年のシェイクスピア』


――2年生になってみて

森田さん :2年生になるとミュージカルをやる機会も多くなり。ミュー唱(※授業「ミュージカル唱法」)とかも始まってる。その年はストレートプレイコースも参加できたので、争奪戦でバチバチでした。有り難いことに、いいポジションもいくつかいただきましたね。実技公開試験は2年生の活動の中でもすごく印象的です。とにかくみんなで部活のように打ち込んだ。クラシック唱法の本番、私結節できて、ゲネプロ歌ってないんですよ。歌えないのに感情溢れちゃって大号泣しながら口パクでやって、周りもそれ見て大号泣みたいな。

あと、学生生活とは離れちゃうんですけど、2年生の時に岩崎廉先生のソルフェージュの授業で、将来ミュージカルを目指すなら受けておきたい振付師さんが3名挙がって。私は前田清実さんのオープンクラスに行って、時間があれば通ってましたよ。なので2年次はずっと、桐朋+アルバイト+ジャズを習いに行く生活をしていました。短大の世界にずっといたら視野が狭くなるって気づいて、清実さんのところで現役でたくさんのミュージカルに出演してる先輩方をめちゃめちゃ見てましたね。本気でミュージカルに出たいってモチベーションを上げてました。
そういえば、図書館に『天保十二年のシェイクスピア』があって、何回も観てたんですよ。その時期に、帝劇でやってた『モーツァルト!』も図書室で観まくってて。それが両方とも清実先生の振り付けだったんです。それにはめっちゃご縁を感じましたね。運命を感じたんです。

卒業公演は篠崎光正先生の『ゴール』(公演情報イベントレポート)。馬のお話なのでみんなで馬の研究をしましたね。馬オーディションもありました。歌、ダンス、馬(笑)。嘶きとか練習しました。あと、ある日突然みんな髪色がカラフルになるんですよね。私、千秋楽の日に高熱出して。朝起きたら体が痛くて、楽屋でもう立てなくて。泣きながら「もう無理」って言って。公演終わってすぐ六本木ヒルズの病院行って、診察結果インフルエンザでした。これ、もう時効ですかね?

演劇専攻49期卒業公演『ゴール』より

演劇専攻49期卒業公演『ゴール』より

演劇専攻49期卒業公演『ゴール』より

演劇専攻49期卒業公演『ゴール』より

森田さん :自分の中で、短大時代は悔しい思い出が多いです。試演会卒業公演、両方とも私は主要な役に付けなかった。めちゃくちゃ頑張ったのに。当時は、実力はある、だれにも負けてない気持ちは強かったのに、どうしてもヒロインに付けないってことが、認められなかった。何でヒロインになれないんだろうって思って。その時は実力があればヒロインになれると思ってた。短大を出て今思うのは、努力を怠らなければ舞台上に立った時にどの役でも誰かが見てくれるんだってこと。それぞれあった役があるんだなって思いますね。でも当時は悔しかったです。卒業公演で配役発表の時、一番下に名前があったので、私。パッと見た時に自分名前ないじゃんって。誰かに相談することもなく。でもやるべきことはやった。今思うと、天狗中の天狗ですね(笑)。鼻伸びすぎてません?

――桐朋のいいところはどんなところだと思いますか?

森田さん :私はスタッフ業に関しては、ものすごく劣等生だったと思うんです。やる気ないし。だけど、舞台をつくることに関して、全部自分たちでやらされるじゃないですか。今、外の現場に出てみてそれがあたりまえじゃないことを知ってるから、ものすごく感謝できる人間になるなあと思います。
当時は、現代の子どもの育て方とずれまくってるところがすごいいいなあと思ってました。辛かったけど、アナログな感じはとてもタイプでしたね。あと、仲間が熱い。みんな目標があって来てるから、まっすぐ突き進んでいく周りに影響を受けますね。刺激をもらってました。

演劇専攻49期試演会『ねこはしる』より

演劇専攻49期試演会『ねこはしる』より

演1前期演技発表会『自転(反転)砂時計』より

演2実技公開試験

プロになるためには、人や場所を選ぶセンスは必要だと思いますね。

森田さん :卒業してすぐ、今はもう名前は変わってしまったんですけど、東宝のミュージカルアカデミーに入りました。今のミュージカル界のトップクリエイターの方々が指導にあたってくれましたね。毎日歌と芝居とダンスのレッスン。桐朋とは全然違いました。みんなミュージカル女優を目指し来てるから、熱さが違うというか。別のまっすぐさがありました。東宝の近くにいるっていう感覚も伴って、このまま頑張ってれば舞台に立てるんじゃないかっていう期待もありつつ。並行して清実先生のところに通ってましたね。アカデミーを1年で卒業してからは、清実先生の主宰するドラスティックダンス"O"に入らせていただいて、カンパニーで公演をやりつつ、オーディションを受けています。

プロになるためには、人や場所を選ぶセンスは必要だと思いますね。ただがむしゃらに努力するだけではつかめる道じゃない。よく考えて頭良く行動するというか。嫌ですけどね、嫌ですけど、必要だと思います。私はオーディションに全然通らなかった。自分だけ落ちるとか。その時は毎回号泣してたんですけど、努力をやめないとか、続ける才能。続けることをやめなければ、いつかチャンスは廻ってくるんだなって、やっと思えるようになりました。23歳の時、初めて舞台に立たせてもらって、商業ミュージカルとかってやっぱり大きな空間じゃないですか。そこで自分は“立ててないな”ってことをすごく感じましたね。地に足がついてないというか。その時の共演者に花組芝居の人や、文学座の方がいて、そして主演は早乙女太一さんだったんですけど、皆さん存在がもう華でありとにかく面白いんですよね。なのですごく自分の力不足を感じました。若かったってのもあるし、何もできない自分がいて。自分には何ができるんだろうって。まぁ、これは今も思ってることでもありますね。

あと、カンパニーに入ってからは清実先生の現場の振り付けアシスタントをさせていただいております。最初にやったのは、吉田鋼太郎さん演出の彩の国シェイクスピア・シリーズ『アテネのタイモン』。短大卒業生の近藤陽子さんもいらっしゃいました。その時はもう必死だったのでぶっちゃけ覚えてないんですけど、つい最近だとホリプロのブロードウェイミュージカル『アリージャンス』で初めてグランドミュージカル振付アシスタントをしました。それまでは複数人のアシスタントの一人だったり、ナンバーのみのアシスタントだったりだったので、そこまで現場につきっきりではなかったのですが、今回は初めてグランドミュージカルのアシスタント、楽譜台詞立ち位置すべて一人で書き込んで把握しておくのってこんなに大変なのかと。初日開けた日に心がスッーとなり日比谷で大号泣しました。振付アシスタントは前に出ることもなく、先生のアシスト、出演者のサポート。とにかく愛を持って。他方に気を配って今何が必要なのか、ものすごく視野が広くないと出来ない職業だなって思います。まだまだ未熟ですが振付アシスタントをやらせてもらってることは今の自分の表現者として必要な有り難いチャンスだなって思います。自分が舞台に立つときにも役に立ちますしね。

卒業式でのひとコマ

卒業式でのひとコマ


――コロナ禍での活動を教えてください

森田さん :学生時代に帝国劇場で『モーツァルト!』を観て絶対にここに立ちたいって思ったんですよ。それは当時のSNSにも残ってて。それで、去年の夏前くらいに『マイ・フェア・レディ』のオーディションがリモートであったんです。ビデオ審査で。自分ではキャラじゃないのかな?って思ってたんですが、そこはやっぱり自分で決めることではなく。ありがたいことに立たせていただけることになりましたね。

――ビデオ審査の感覚は?

森田さん :緊張はまずしない。だけど、生で審査員から受け取る雰囲気が全くない。期待も出来ないし自分の評価も出来ない。いくらでも撮り直しできるのはいいけれど、受かった時に現場で「こんなはずじゃないぞ」って思われるのは怖いですよね。生の稽古でちゃんと会った時に、実力を見せることが自分の使命だと思いますね。

――最後に、中高生へのメッセージをお願いします!

森田さん :学生時代はとにかくがむしゃらにやれって思います。変なこと考えず、とにかく動き続けろって思います。変に悩む必要はないし、悩んだところで何も起きないぞって言いたい。

森田万貴さん出演情報

帝国劇場ミュージカル『マイ・フェア・レディ』
【東京公演】2021年11月14日(日曜日)~11月28日(日曜日)帝国劇場

◆全国ツアー公演◆
【埼玉公演】2021年12月4日(土曜日)ウェスタ川越大ホール
【岩手公演】2021年12月10日(金曜日)~11日(土曜日)盛岡市民文化ホール
【北海道公演】2021年12月17日(金曜日)~20日(月曜日)札幌文化芸術劇場hitaru
【山形公演】2021年12月25日(土曜日)~26日(日曜日)やまぎん県民ホール(山形県総合文化芸術館曜日)
【静岡公演】2022年1月1日(土曜日)~3日(月曜日)静岡市清水文化会館マリナート
【愛知公演】2022年1月6日(木曜日)~7日(金曜日)愛知県芸術劇場大ホール
【大阪公演】2022年1月12日(水曜日)~14日(金曜日)梅田芸術劇場メインホール
【福岡公演】2022年1月19日(水曜日)~28日(金曜日)博多座

※本記事中の情報等は、2021年11月1日現在のものです。
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