グローバルナビゲーションへ

本文へ

フッターへ



活躍する先輩たち

演劇専攻卒業生インタビュー 47期 柴田美波さん



コロナ禍でも自分の世界の彩度を鮮やかにしていくこと

現在は文学座演技部に所属し、劇団内外で活躍している柴田美波さん。
共に学生時代を過ごした同期の研究室助手がインタビューしました!
柴田美波(Minami SHIBATA)
文学座所属。桐朋学園芸術短期大学演劇専攻47期卒業生。
プロフィール写真撮影:神ノ川智早

文学座本公演『越前竹人形』(2016年)より
撮影:鶴田照夫/写真提供:文学座

文学座本公演『越前竹人形』(2016年)より
撮影:鶴田照夫/写真提供:文学座


――文学座は何年目ですか?

柴田さん :座員になって2年目です。短大卒業後すぐに養成所に入って、本科1年、研修科を2年、準座員を2年経て、2019年度に座員になりました。

――同期はどれくらいいるの?

柴田さん :養成所に入った当初は昼間部・夜間部合わせて60名ほどいたんだけど、今は私を入れて2人。

2年間だったら、2年目で進路を考えて、さらに学ぶかを選択できると思った


――演劇を始めるきっかけは?

柴田さん :中高一貫の女子校に通ってたんだけど、入学してすぐの文化祭で演劇部が『ゼンダ城の虜』っていう作品をやっていて、女子校だからいわゆる宝塚みたいに、男役女役ってものがあったんですよ。それを観て純粋に「すごい!かっこいい!」と思って入部しました。
初めのころ、大きい声を出すのが楽しくて、先輩に発声練習で褒められたりもして、それまで褒められるっていう経験がなかったからすごく嬉しかった。

――桐朋学園に入学するのはどういう経緯?

柴田さん :どんどん夢中になって続けていくうちに高2の時に全国大会に出場するんだけど、その頃から進路を考え始めて、もう少し演劇を学びたいなあと思っていた時に両親が演劇系の大学のパンフレットを集めてくれたの。それで演劇系大学のオープンキャンパスに行きはじめるんだけど、他大学は何をやってるかよく分からなくてぴんとこなかったんだよね。
で、高3の夏に桐朋のワークショップに参加してみて、建物に入った瞬間、直感でここがいいかもって思ったの。ワークショップは越光先生とゲスナー先生の講座を受けた気がする。最初にゲスナー先生に「心はどこにあるか?」って聞かれたの、すごく印象に残っている。

――わ!それゲスナー先生だったんだ!言葉だけ覚えてる!

柴田さん :みんな、「頭」とか「心臓」とか「丹田」とか言って。「丹田知ってるんですか!」って言われてたりしてた(笑)。今でも覚えてるなー。
プラス、2年か4年か選べるのも良かったなあ。2年目でまた進路を考えて、さらに学ぶかを選択できると思ったんだよね。

ここから本当の意味で、演劇とか演技に向き合い始めた気がする

柴田さん :入学当初は、つまらない学生だったと思う。それまで中高一貫で6年間ずっと同じメンバーで過ごしてきたのもあって、初めて誰も知っている人がいない環境で学ぶことに不安やストレスを感じていた気がします。結構大変だった。
前期終了後9月の面接で、ゲスナー先生に「もっと周りと一緒にやって!」って言われたりもしたんだけど、当時、私はだれにも負けない!みたいな野心が強かったから、そういう意味でも硬いガードを張っている感じになっていたと思う。私なりに学ぶことを楽しんではいたけど、周りはやりにくかったかも。

――それはいつまで続いたの?

柴田さん :1年の秋のワークショップで井田邦明先生に出会ったのがターニングポイント。衝撃だった。「この人信頼できる!何とかして認めてもらいたい、面白いと思ってほしい」って思った。

――直感?

柴田さん:そう、直感(笑)

――それで、海外研修でもイタリアで井田先生に学び、2年の夏のワークショップも井田先生、そして満を持して秋の試演会に挑むわけね。

柴田さん :井田先生が演出した『ダチョウの一撃』(公演情報イベントレポート)。稽古の最初から積極的に挙手したりして前に出たり、井田先生の言うことを自分なりにめちゃくちゃ考えたりしてた。
どんな流れでこの言葉が出てきたのかは覚えてないけれど、「回転寿司じゃなくて、失敗してもいいから自分で握ってみろよ!」って言葉をすごく覚えていて。

とにかく表面で、形でやらないこと。自分一人でやることのつまらなさと、周りと一緒にやることの大変さと面白さを学んだと思います。ここから本当の意味で、演劇とか演技に向き合い始めた気がする。今でも井田さんの言ってたことは自分の課題だし、これからも向き合い続けていくと思う。

――本番はどうだった?

柴田さん :初日は「テンポが速すぎたね」って言われて。多分それは自分だけで頑張っちゃって、周りを感じていなかったからだと思う。2日目の本番前に少し稽古してくれた時に、「お前は自分以外の人間を馬鹿だと思っているだろう、それがどうかっていうより、そんな自分を笑ってみろ。今回の役はそれを生かせるから。」みたいなことを言われたの。

それで2日目は登場した瞬間から初日より笑いが起きて、そこでお客さんを感じることについても少し自覚できた。初日よりは良かったんだと思う。でも、なんで良くなったのか理解出来なくて悔しかった。偶然できても、理解できないと次に生かせないから。

演劇専攻47期試演会『ダチョウの一撃』より

演劇専攻47期試演会『ダチョウの一撃』より

演劇専攻47期試演会『ダチョウの一撃』より

演劇専攻47期試演会『ダチョウの一撃』より


――それを経て、卒業公演ではどうだった?

演劇専攻47期卒業公演『美しきものの伝説』『ブルーストッキングの女たち』公演情報イベントレポート
柴田さん :どうにか自分のやりやすい方にいかないように意識したかなあ。表面上だけでしないように。

――確かにその頃の美波はすごく闘ってるイメージ。裏プロ(※)のことも意識してた?

(※)裏プロ:ダブルキャスト公演のもう片方のチーム。また、別チームで自分と同じ役を演じる役者のこと。
柴田さん :裏プロめちゃめちゃ意識するよー!本当にやめてほしい!勝ち負けじゃないって分かってるけど、負けたくないとか思っちゃうし!もうダブルキャストとか二度とやりたくない!(笑)


――桐朋学園で学んで今でも役に立っていることはある?

柴田さん :何でも自分たちでやらなきゃいけなかったところかな。俳優のことだけじゃなく、スタッフの仕事ができたことは私にとって大きかったです。あたりまえだけど、改めて俳優だけじゃ演劇は成り立たないということを実感したので。たくさんの人たちが集まって創られているんだなと。

――美波は照明部チーフとしても頑張ってたよね

柴田さん :だから今でも観劇する時はめっちゃ(照明を)見ちゃう。演劇の楽しみ方の幅が広がるものだよね。
演劇は「総合芸術」って言うけど、役者演出各スタッフ全部の要素が合わさって出来る物だなぁって、改めて思う。俳優だけじゃあんまり面白くはならないね。

演劇専攻47期卒業公演『ブルーストッキングの女たち』より

演劇専攻47期卒業公演『ブルーストッキングの女たち』より

演劇専攻47期卒業公演『ブルーストッキングの女たち』より

演劇専攻47期卒業公演『ブルーストッキングの女たち』より

狭い狭い自分の世界を少しずつ広げていく作業。これってなかなか大変なことだけど、何物にも代えがたい豊かな経験だと思います。


――卒業後から現在までの活動で印象に残ってる作品は?

柴田さん :DULL-COLORED POP福島三部作』。2019年にこの作品の第一部の初演を見るまで、恥ずかしながらダルカラという劇団や、主宰で演出家の谷(賢一)さんのことをはっきりと認識していなかったんです。SNSか何かで公演の情報をみて、なぜか絶対に観に行かなきゃと思って、当日券の抽選でぎりぎり最後に当たって、観たらめちゃくちゃ面白かったんです。それで、オーディションのチラシを見て絶対に受けなきゃと思って受けたら、有り難いことに次の二作品に出演することが出来ました。

自分の直感を信じてよかったし、こういう運命的なものって、人生にきっと何回かあって、それを掴めてよかったなと思いました。

――稽古や本番の様子はどうだった?

柴田さん :私が出演した第三部は、2011年の東日本大震災に真正面から向き合った作品。稽古初日に台本が2ページか3ページくらい配られたんだけど、地震のシーンから始まるのを知った瞬間、稽古場がズーンと重くなって。その時の空気が忘れられない。すごいことをやらないといけないんだな、覚悟を決めないといけないんだなって思った。

最後は福島のいわき市で上演したんだけど、足がすくむのを感じました。もちろんあの地震を実際に経験したお客さんの前で演じるわけだから、自分の気持ちよさだけでやって感情におぼれるのは勿論駄目だし、自分なりに誠実に演じようと心掛けました。

福島三部作 第三部 『2011年:語られたがる言葉たち』より
撮影:前澤秀登

福島三部作 第三部 『2011年:語られたがる言葉たち』より
撮影:前澤秀登


――緊急事態宣言中はどう過ごしてた?

柴田さん :自粛期間中は本当にずっと家にいて、いろいろと考える時間がありました。自分が環境に恵まれて、演劇を自然にやっていたんだなってことを思い知った。細かいことでは選択してきたけど、流されてやってきたんだなと。“なんとなく”だった。自分は演劇がなくても生きていけるんじゃないか、何かをつくることをしないと壊れてしまうような人たちとは違うんじゃないかって。そういった意味で、私は卒業してから、自分が心の底からやりたいと思うことに時間を忘れて熱中したり、何かを創ったり、行動したりすることで生まれる苦労を経験してこなかったのでは?って。だから、これからたくさん“苦労”しようと思ってます。

コロナ禍では、文学座の公式YouTubeの動画編集をしたり、文学座クラウドファンティングに関わったり(3月31日に終了)、幸いにも決まっていた舞台が色々な制限はありながらも上演できたので、その活動をしていました。
「歴史だけでは食べていけない」――老舗劇団が直面したコロナ危機2021.05.02配信/Yahoo!ニュース オリジナル 特集 より

――宣言明け1発目は座・高円寺の小・中学生向けのレパートリーシアターかな?

柴田さん :うん。7月に。同じメンバーで4年目を迎える作品だったから、久しぶりの仕事で不安もあったけど気負わずに楽しめました。

――最後に、中高生へのメッセージをお願いします!

柴田さん :最近やっと、本を読むこと、映画や演劇、絵画などに触れること、旅行をすること等の大切さが実感として分かってきた気がしています。自分以外の存在と対話する、交流することで、狭い狭い自分の世界を少しずつ広げていく作業。これってなかなか大変なことだけど、何物にも代えがたい豊かな経験だと思います。
私は10代のころからもっと実践していればよかったと後悔して、今取り戻そうと頑張っているので、よかったら皆さんも今から始めてみてください。どんどん世界の彩度が鮮やかになっていくと思います。

柴田美波さん出演情報

パルコ・プロデュース『首切り王子と愚かな女』作・演出:蓬莱竜太
【東京公演】2021年6月15日(火曜日)~7月 4日(日曜日)パルコ劇場
【大阪公演】2021年7月10日(土曜日)~7月11日(日曜日)サンケイホールブリーゼ
【広島公演】2021年7月13日(火曜日)JMSアステールプラザ 大ホール
【福岡公演】2021年7月16日(金曜日)~7月17日(土曜日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール

文学座 地方公演『怪談 牡丹燈籠』作:三遊亭円朝/脚本:大西信行/演出:鵜山 仁
2021年 9月:静岡県
2021年11~12月:中国地方・可児市

※本記事中の情報等は、2021年6月1日現在のものです。
  1. ホーム
  2.  >  活躍する先輩たち
  3.  >  卒業生の紹介
  4.  >  演劇専攻卒業生インタビュー
  5.  >  演劇専攻卒業生インタビュー 47期 柴田美波さん
page top